
― 6代目 PRELUDE に初搭載されるハイブリッド&シフトテクノロジーを深読みする ―
Honda S+ Shiftと次世代e:HEVの革新的な組み合わせが、2025年9月発売予定の新型PRELUDEに初搭載されます。このハイブリッドシステムは、高効率と高感性を両立させる画期的な技術として注目を集めています。
1. Honda S+ Shift搭載の次世代e:HEVを全面刷新した理由
Honda は2040 年の 100 % 電動化へ向かう途上で、2020 年代後半まではハイブリッド需要が頂点に達すると分析しています。その”橋渡し役”として 次世代 e:HEV を据え、ドライバビリティを高める仕掛けとして Honda S+ Shift を組み合わせるロードマップを提示しました。最初の市販車が 2025 年 9 月発売予定の新型 PRELUDE です。(Honda Global)
2. 次世代 e:HEV ― Honda S+ Shift対応の中核コンポーネント
項目 | 旧世代 (2020 Civic e:HEV 参考) | 新世代 2.0 L e:HEV | 技術的ポイント |
---|---|---|---|
エンジン | 2.0 L 直噴 Atkinson (熱効率 ~41 %) | 新開発 2.0 L 直噴 Atkinson ・理論空燃比域を拡大 ・全域で高トルク化 | 10 %超の燃費改善を目標 (Honda Global) |
フロントドライブユニット | 2 モーター/空冷 | 小型・高効率ユニット+統合冷却 | 部品共通化で大幅コストダウン(Honda Global) |
バッテリー | Li-ion 72 cells | 低抵抗セル+新BMU | 高入出力で回生強化 |
電子制御 | Linear Shift Control | Honda S+ Shift | 疑似多段変速と音響演出でスポーツ性向上 |
考察
- エンジン高効率化と電動ユニット一体化を 一挙に刷新 することで、コストを抑えつつ性能を底上げする”世代スキップ戦略”が透ける。
- 熱効率 42 % 超が達成されれば、同排気量の Toyota THS-II(最大 41 %) を逆転し得る。(Paul Tan’s Automotive News)
3. Honda S+ Shift ― “シフトのない HV にシフトフィールを”
3-1. 仕組み
- エンジン回転制御
高出力ジェネレータと協調し、アクセル操作に応じて 擬似的に回転数を跳ね上げ。 - ASC (Active Sound Control)
スピーカーから回転数同期サウンドを重畳し、聴覚的にも「ギアがつながる感」を演出。 - パドル操作
7 〜 8 段相当の固定エンジン回転パターンを呼び出し、コーナリング時はシフトホールドでエンブレ効果を強化。(Honda Global)
3-2. 進化点と意義
観点 | 従来 Linear Shift Control | S+ Shift | 期待効果 |
---|---|---|---|
変速段数 | 4 段相当 | 7+ 段相当 | スポーツ走行のリズム感向上 |
操作系 | パドルなし | パドル+S+ ボタン | ドライバーの”介入余地”拡大 |
音響 | 回転抑制音 | 回転同期音 | 聴覚情報でスピード感を補完 |
考察
- CVT ラバー感を嫌う層に「物理ギアが無くても楽しい」を示す実証実験。
- e:HEV の弱点=高負荷時の回転と加速の乖離 を ASC 連携で解消している点が秀逸。
- 一方で「合成音は邪道」とするピュア層からの反発リスクも残り、音作りのチューニングが量販成功の鍵を握る。
Honda S+ Shiftの詳細な技術仕様については、Honda S+ Shift 技術仕様完全ガイドでも解説しています。
4. Honda S+ Shift搭載車の性能シミュレーションと競合比較
指標 | 次世代 e:HEV 2.0 L (推定) | Toyota THS-II 2.0 L | BEV (同クラス 60 kWh) |
---|---|---|---|
システム最高出力 | 200-220 ps | 194 ps | 230-260 ps 相当 |
0-100 km/h | 7 秒前後 | 7.5 秒 | 6.5 秒 |
WLTC燃費 | 21-23 km/L | 22-24 km/L | 該当なし |
車両重量 | ~1,500 kg | ~1,450 kg | ~1,700 kg |
考察
- 高速域ではエンジン直結+ロックアップクラッチで電費ロスを抑制し、長距離巡航燃費で THS-II と拮抗する可能性。
- モーター瞬時トルクとパドル操作により、カタログ値以上に”速く感じる”フィーリングを演出できる余地が大きい。
5. Honda S+ Shiftと次世代e:HEVの規制・ビジネス面メリット
角度 | Honda の狙い | e:HEV / S+ Shift の役割 |
---|---|---|
CAFE & CO₂ | 2030 年日本 CAFE +32 % 改善目標 | BEV 投入までの平均燃費底上げ (Honda Global) |
収益性 | バッテリーコストを抑えた高粗利モデル創出 | “スポーツ HV” という未開拓ニッチでプレミア価格を許容 |
ブランド | 電動でも”操る喜び”を訴求 | S+ Shift による感性価値アピール |
技術実証 | e-AWD や軽量プラットフォームを試験 | PRELUDE で顧客フィードバックを収集し、量販モデルへ横展開 |
6. Honda S+ Shiftシステムの今後想定される派生と進化
- High-Output e:HEV
インバータ容量とバッテリー C レートを引き上げ、250 ps 級+0-100 km/h 6 秒切りを狙う “Type S” 派生。 - PHEV / BEV 派生
駆動ユニット共用のまま電池を大型化し、WLTP 100 km EV 走行を実現する PHEV 版。 - 他車種展開
S+ Shift 付き e:HEV を Civic Hatch / HR-V に搭載し、”普通のクルマでも楽しい HV” を拡張。 - サウンドパーソナライゼーション
OTA でエンジン音プロファイルを変更できる 「Sound Store」 の実装が噂されており、課金ビジネスの布石となる可能性。
7. Honda S+ Shift導入のリスクと課題
リスク | 影響 | 対処の方向性 |
---|---|---|
合成サウンドの好き嫌い | エンスージアスト層の拒否感 | 音質プリセット選択権を与え”オフも可”に |
システム重量増 | 動力性能・タイヤ磨耗 | 軽量プラットフォームで ‐90 kg を相殺(Honda Global) |
コスト競争力 | 円安+高原材料費で車両価格上振れ | 部品共通化率 60 % 超で吸収 |
ハード複雑化 | 故障時の修理費増 | モジュール一体化で交換工賃圧縮 |
8. まとめ ― “シフト”で差別化するハイブリッド第4世代
ポイントを一言で
次世代 e:HEV は「高効率 × 高感性」を両立させる電動パワートレイン。
Honda S+ Shift は”音と回転数”でマニュアル文化の DNA を継承するインターフェース。
PRELUDE で初お披露目となるこの組み合わせは、BEV 一辺倒とガソリン回帰の狭間で揺れるスポーツカー市場に、第三の解を提示する存在です。正式スペックの公開はもう間もなく。
今後のチェックポイントは以下の 3 つ。
- 燃費認証値と熱効率 (%):THS-II を超えるか。
- 車両重量と 0-100 加速タイム:S+ Shift の効果検証。
- 価格設定:GR86 との差額が 70 万円以内なら勝負になる。
「MT がなくてもワクワクできるのか?」その答えを PRELUDE が示してくれるはずです。続報を待ちながら、あなたの”次世代スポーツ観”をアップデートしておきましょう。
Honda S+ Shiftと次世代e:HEVの最新情報については、Honda 電動化技術ロードマップ2025でも詳しく解説しています。