
――客室面積・日額コスト・減揺装置・環境性能まで”数値で深掘り”
はじめに
2025年7月20日に就航した新造クルーズ客船「飛鳥Ⅲ」。総トン数52,200GT・乗客744名・乗組員約470名・客室385室(全室海側バルコニー付)という”海上ホテル”です。(アスカクルーズ, アスカクルーズ)
対して、太平洋フェリー「いしかり」や商船三井さんふらわあ「くれない」、名門大洋フェリー「フェリーきょうと」など国内長距離フェリーは、人と車を効率よく運ぶ”海の高速道路”。スペック・料金・体験設計が根本的に異なります。(taiheiyo-ferry.co.jp, 商船三井さんふらわあ, cityline.co.jp)
1. 主要スペック比較(船そのもの)
指標 | 飛鳥Ⅲ | 太平洋F「いしかり」 | さんふらわあ「くれない」 | 名門大洋「フェリーきょうと」 |
---|---|---|---|---|
総トン数 | 52,200GT | 15,762t | 17,114t | 15,025t |
全長×全幅 | 230m × 29.8m | 199.9m × 27.0m | 199.9m × 28.0m | 195m × 27.8m |
航海速力 | 最高20ノット | 26.5ノット | 22.5ノット | 23.2ノット |
旅客定員 | 744名 | 777名 | 716名 | 675名 |
乗組員 | 約470名 | ―(公表なし) | ― | ― |
車両搭載 | 基本なし | 乗用車100/トラック184 | 乗用車100/13mトラック137 | 乗用車140/トラック162 |
出典:各社公式・報道・技報。(アスカクルーズ, taiheiyo-ferry.co.jp, 商船三井さんふらわあ, 商船三井さんふらわあ, cityline.co.jp, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)
“人あたり空間量”の差
- 飛鳥Ⅲ: 52,200GT ÷ 744名 ≒ 70GT/人
- いしかり: 15,762t ÷ 777名 ≒ 20t/人
→ クルーズ客船はフェリーの約3倍の空間余裕度。※筆者計算(上表データより)。
クルー対乗客比
- 飛鳥Ⅲは乗客1.6人にクルー1人(744÷470)という手厚さ。※同上計算。(アスカクルーズ)
2. 客室”面積・タイプ”まで比較
飛鳥Ⅲの客室(全室バルコニー付)
- アスカバルコニー:22.0㎡(271室)。(アスカクルーズ, TRAICY(トライシー))
- ソロバルコニー:19.4㎡(26室)。(TRAICY(トライシー))
- ミッドシップスイート:44.3㎡(54室・ユニバーサル仕様44.9㎡)。(アスカクルーズ, ウィキペディア)
- パノラマスイート:67.3㎡(8室)/キャプテンズスイート:87.1㎡(4室)/ロイヤルPH:114.8㎡(2室)など。(ウィキペディア)
多くのフェリーは”相部屋~小型個室”が中心で、詳細面積は非公開が多い一方、さんふらわあ新造船ではコネクティング可能なスイートや拡張された大浴場など「カジュアルクルーズ」志向の拡充が見られます。(商船三井さんふらわあ)
3. 料金構造と”日額換算”
飛鳥Ⅲ(初航海7日間・横浜発着)
- 会員割引:885,600円~4,307,400円/人(2名1室)。通常料金984,000円~4,786,000円。(アスカクルーズ, cruisevacation.jp, 名鉄観光旅行ガイド)
- 日額換算(筆者計算):
- 最安:885,600円 ÷ 7日 ≒ 126,500円/日
- 最高:4,307,400円 ÷ 7日 ≒ 615,300円/日
- 1名利用や上位客室(最大9,572,000円)だとさらに高額(≒1,367,400円/日)。(外国船・日本船のクルーズ専門旅行会社 | ビュート, cruisevacation.jp)
- 含まれるもの:朝6・昼5・夕6の食事(コースにより)+船内ショー等。寄港地観光ツアーは別料金・定員制。(外国船・日本船のクルーズ専門旅行会社 | ビュート, アスカクルーズ)
東京九州フェリーの例(期間A・片道1泊)
- 基本運賃:大人14,000円×人数
- ルームチャージ:デラックス48,000円/室(2名利用なら計76,000円 → 38,000円/人・1泊)
- 食事・車両は”別立て加算”方式。(東京九州フェリー –, タビリス)
違いの核心
- クルーズ:移動+宿泊+多くの食事+エンタメ=パッケージ料金。
- フェリー:運賃ベースに客室・車両・食事を”足し算”。
(各社料金ページより整理)(東京九州フェリー –, アスカクルーズ)
4. 乗り心地・安全:減揺装置と運航設計
- 飛鳥Ⅲは横揺れ減揺装置「フィン・スタビライザー」搭載。(アスカクルーズ)
- いしかりもフィンスタビライザー装備(公式・Wiki記載)。(ウィキペディア)
- 多くの国内フェリーも横揺れ防止装置を標準装備(例:津軽海峡フェリーQ&A)。(tsugarukaikyo.co.jp)
速力が高いフェリー(22〜27ノット)は到着が早い反面、海況・船型で揺れ方が異なる。クルーズ船は速力より安定性・快適性志向の設計が多い(推察)。
フィンスタビライザー自体は”揺れを完全にゼロ”にはしないため、酔いやすい人は酔止め準備を。(ウィキペディア, tsugarukaikyo.co.jp)
5. 環境性能:燃料と排出削減
飛鳥Ⅲ
- トリフューエル(LNG・重油・軽油)エンジン+陸上電力受電を採用。(アスカクルーズ, アスカクルーズ)
- 2025年6月、国内初となるクルーズ客船へのLNG燃料供給を横浜港で実施。(アスカクルーズ, Logi Today)
さんふらわあ「くれない」
- 国内フェリー初のLNG燃料+重油のデュアルフューエル。CO₂約25%削減、SOx 100%削減、NOx約85%削減効果を公表。(モル, 商船三井さんふらわあ)
- 三菱重工技報でもCO₂従来比約20%減と報告。(Mitsubishi Heavy Industries, Ltd., Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.)
クルーズ客船・長距離フェリーともにLNG化や陸電対応が進み、IMO規制や国内環境指標への対応がトレンド。
6. 旅程・ダイヤの思想
- 飛鳥Ⅲ:観光重視の巡航型。初年度だけで国内30港に寄港(横浜除く)するなど”寄港地体験”が旅程の核。(アスカクルーズ, アスカクルーズ)
- フェリー:夜発・朝着など定期航路ダイヤで物流優先。(taiheiyo-ferry.co.jp, 商船三井さんふらわあ)
7. さらに深掘りした比較観点
観点 | 飛鳥Ⅲの特徴 | フェリー側の特徴 | ソース/備考 |
---|---|---|---|
客室1室面積 | 19.4㎡〜114.8㎡(全室バルコニー) | 面積非公開が多い/相部屋~小個室中心(新造船は個室化拡大) | (アスカクルーズ, TRAICY(トライシー), ウィキペディア, 商船三井さんふらわあ) |
1日あたり総費用 | 約12.6万〜136万円超(7日間例) | 片道1泊 約3.8万円/人(デラックス例)+食事代等 | (アスカクルーズ, cruisevacation.jp, 東京九州フェリー –) |
食事含有 | 朝昼夕ほぼ含む(コース差あり) | 基本は別料金/ビュッフェ・定食形式 | (外国船・日本船のクルーズ専門旅行会社 | ビュート, 東京九州フェリー –) |
エンタメ設備 | 劇場・ショー・講座・スパ・プール・ジム等多数 | シアタールームやキッズスペース等、”移動の快適化”中心 | (アスカクルーズ, taiheiyo-ferry.co.jp, 商船三井さんふらわあ) |
減揺装置 | フィンスタビライザー搭載 | 同上(多くの長距離フェリーが装備) | (アスカクルーズ, ウィキペディア, tsugarukaikyo.co.jp) |
環境対応 | LNG含む3燃料+陸電 | LNGデュアル燃料化(くれない等) | (アスカクルーズ, 商船三井さんふらわあ, モル) |
8. どちらを選ぶ?目的別ガイド(再掲)
- “非日常の船旅・記念日・上質な食とエンタメ重視” → 飛鳥Ⅲなどクルーズ客船。(アスカクルーズ, アスカクルーズ)
- “車も積んで安価に長距離移動・夜間移動で時間節約” → 国内長距離フェリー。(東京九州フェリー –, taiheiyo-ferry.co.jp, 商船三井さんふらわあ)
参考リンク(外部サイト)
(本文中の出典と同一。詳しくは各公式・報道ページをご確認ください)
- 飛鳥クルーズ公式(飛鳥Ⅲ概要・料金・客室)
- 太平洋フェリー「いしかり」公式船舶ページ
- 商船三井さんふらわあ(くれない)公式/プレスリリース/技報PDF
- 名門大洋フェリー 公式船舶紹介
- 東京九州フェリー 料金ページ
まとめ
「船で移動する」のか、「船で滞在する」のか。ここが選択の起点です。
この記事が、あなたの”海の時間”選びの参考になれば幸いです。