
日産ワンペダルの現在地
―「e‑Pedal」が完全停止をやめ、「e‑Pedal Step」へ移行した理由と車種別対応表
はじめに
2017年にリーフが搭載した「e‑Pedal」は、アクセルペダルだけで発進→加速→減速→0 km/h停止→停止保持まで行える”真のワンペダル”として話題を呼びました。ところが2020年以降に登場した日産車では、同じワンペダル機能が「e‑Pedal Step」へ置き換わり、停止直前に弱いクリープが残り、完全停止にはブレーキ操作が必須になっています。
本稿では
- 2つのワンペダルの違い
- 日産が「完全停止」をやめた4つの理由
- 2025年現在の車種別対応状況
- 今後の展望とユーザーへのヒント
を体系的にまとめます。
1. 「e‑Pedal」と「e‑Pedal Step」の違い
e‑Pedal | e‑Pedal Step | |
---|---|---|
登場年 | 2017 (リーフ) | 2020(第2世代e‑POWER以降) |
減速度 | 最大 0.2 G(回生+油圧ブレーキ協調) | 最大 0.15 G前後(主に回生) |
0 km/h停止保持 | あり – アクセルを離したまま停止維持 | なし – 約5 km/hでクリープに移行、停止保持はブレーキで行う |
ブレーキランプ制御 | 減速度に応じ自動点灯 | 同左 |
主な採用車 | リーフ (ZE1)、初期e‑NV200 等 | アリア、ノート/AURA、キックス、エクストレイル、セレナ(C28)、サクラ ほか |
出典:日産技術ライブラリ (日産グローバルサイト, 日産 FAQ)
2. 「完全停止」をやめた4つの理由
# | 背景・狙い | 根拠 |
---|---|---|
① 低速での”カックン”を抑え乗員快適性を向上 | 停止直前の強い制動で酔いやすいとの声が多く、開発陣は「自然で滑らかな止まり方」を優先したと説明。 | 開発者インタビュー (autonavi.car-mo.jp) |
② AT車からの乗り換えハードルを下げる | 従来車のクリープ挙動を残すことで、ブレーキ操作の習慣を維持しやすい。 | 日産FAQ 60314 (日産 FAQ) |
③ e‑POWERとの制御統一 & コスト最適化 | シリーズ式HVはバッテリー残量や発電中の制約で回生が制限される場面が多い。ブレーキ併用のStepなら制御が単純化し、EVとHVでハードを共通化できる。 | 技術レビュー NISSAN TECHNICAL REVIEW No.89 (日産グローバルサイト) |
④ 滑りやすい路面での安定性 | クリープを残す方が雪道・氷結路でタイヤロックを抑えやすく、ABS介入も減る。 | 技術ライブラリ e‑Pedal Step (日産グローバルサイト) |
要するに
日産は「安全・快適・商品統一・コスト」を天秤にかけ、”完全停止なし”のe‑Pedal Stepへ仕様を更新した──というのが公式見解です。
3. 車種別対応表(2025年7月時点)
車名 | 発売・世代 | 採用方式 | アクセルだけで0 km/h停止保持 | 参考ソース |
---|---|---|---|---|
リーフ (ZE1 2017–) | EV | e‑Pedal | ○ | (日産グローバルサイト) |
e‑NV200 (2014–2021) | EV商用 | e‑Pedal相当(最終40 kWh除く一部設定) | △ ※回生強・保持なし | (DrivingElectric) |
アリア (2023–) | EV | e‑Pedal Step | ×(約5 km/hでクリープ) | (Nissan) |
ノート (E13 2021–) / AURA | e‑POWER | e‑Pedal Step(旧称e‑POWER Drive改) | × | (日産自動車, 日産 FAQ) |
キックス (2020–) | e‑POWER | e‑Pedal Step | × | (日産自動車) |
エクストレイル (T33 2022–) | e‑POWER / e‑4ORCE | e‑Pedal Step | × | (日産自動車) |
セレナ C27 (2018–2022) | e‑POWER Drive | △ ※強回生だが停止保持なし | (新車・中古車の自動車総合情報サイト〖carview!〗) | |
セレナ C28 (2022–) | e‑Pedal Step | × | (日産自動車) | |
サクラ (2022–) | 軽EV | e‑Pedal Step | × | (日産自動車) |
凡例
○ : アクセルオフだけで停止保持まで可能
△ : 強回生でほぼ停止するが保持にはブレーキ操作が必要
× : 約3–7 km/hでクリープが残り、完全停止にはブレーキ必須
4. 今後の展望とユーザーへのヒント
- 次期リーフ/新世代EVはStep採用濃厚
プラットフォーム統一と法規認証コスト削減の流れから、完全停止型e‑Pedalは現行リーフが最後となる可能性が高い。 - “選択式ワンペダル”の可能性
ユーザーからは「モードで停止保持の有無を切り替えたい」という要望が強く、OTAアップデートでの実装余地は残る(ただしブレーキランプ制御など再認証が課題)。 (Reddit, autonavi.car-mo.jp) - 現行車ユーザーへの小技
- Auto‑Hold併用で擬似”停止保持”は可能(エクストレイル等)。 (clicccar.com)
- モード記憶をONにすると再始動後もe‑Pedal Stepが自動復帰(アリア/サクラなど)。 (日産 FAQ)
まとめ
- 2017–2019年頃のリーフ等を除き、2020年以降の日産車はすべて「e‑Pedal Step」に統一。
- 移行理由は低速時の乗り心地・操作慣性・ハイブリッド制御・安全性・コストという複合要因。
- 不満がある場合はAuto‑Holdの活用やモード記憶設定で操作負担を軽減できる。
- 将来的にはソフトウェア選択式が実装されるかどうかが注目ポイント。
ワンペダルの”味付け”は進化過程。 自分に合った減速フィールを持つモデル/設定を選び、賢く使いこなしていきましょう。